(第1次)日本経穴委員会の歩み
第二次日本経穴委員会(仮称)世話人代表
明治鍼灸大学教授
矢野 忠
1.経 過
1965年 4月、日本経穴委員会(The Japan Meridian and Point Committe)が設立。
10月、第1回国際鍼灸世界学会(1st International Congress of Acupuncture & Moxibustion)が契機。
第1回国際経絡経穴委員会(1st International Meridian and Point Comitte Meeting)が上記学会のプログラムとして開催。
日本案の『経絡経穴名の統一』(Standardization of the Name of the Meridian and The Points)を発刊。
1969年 パリにおいて第2回国際鍼灸世界学会(2nd International Congress of Acupuncture & Moxibustion)が開催。
しかし、国際経絡経穴委員会は催されず。
その後、日本経穴委員会は自然解散。
1973年 7月、日本経穴委員会(当初は日本経穴検討委員会と称した)が改めて発足。
ソウルで第3回国際鍼灸世界学会(3rd International Congress of Acupuncture & Moxibustion)が開催。
しかし、国際経絡経穴委員会は開催されず。
1974年 9月経絡経穴国際協定委員会(International Committee on Standardization of Meridian and Points)が国際鍼灸世界学会(International Congress of Acupuncture & Moxibustion)から独立して開催。
日本、オーストラリア、フィリピン、韓国の4ヶ国が参加。
1975年 経絡経穴国際協定委員会の作業の一部は文部省の総合科学研究費の助成を受けて行われた。
ラスベカスで第4回国際鍼灸世界学会(4th International Congress of Acupuncture & Moxibustion)が開催。
しかし、国際経絡経穴委員会は開催されず。
1977年 東京で第5回国際鍼灸世界学会(5th International Congress of Acupuncture & Moxibustion)が開催。
時間の関係で国際経絡経穴委員会は開催されず。
1978年 日本では古典55編の経穴の記載の調査開始。
1981年 WHOの要請を受けて経絡・経穴に関する国際的統一について、昭和大学医学部・坂本浩二教授が世話人となり、WHO西太平洋地域事務局長・中嶋宏氏と日本経穴委員会および同専門委員会数名と第1回の会合が開かれた。
1981〜1982年 この間に第1次から第4次日中会議が開催
1981年 5月 第1次日中会議 東京
@14系の経穴数は361穴
A経穴部位は体表解剖学的に定める
B経穴名には中国名を留めておくこと
C部位決定には『素問・霊枢』によるべき
1981年 8月 第2次日中会議 北京
1981年11月 第3次日中会議 11月 北京
1982年 8月 第4次日中会議 8月 北京
第2次から第4次日中会議のなかで
@中国側がピンインを主とする案
A日本側の基準線
の2点については、自国に持ち帰って検討。
1982年12月 マニラのWHO事務局でワーキング会議(Working Group in the Standardization of Acupuncture Nomenclature)が開催。
9ヶ国(日本・中国・韓国・香港・オーストラリア・フィリピン・ニュージランド・シンガポール・ベトナム)からの参加者が出席。
・経絡については英語名、略語(alphanumeric cord)、ビンイン、漢字
・漢字は経絡・経穴ともに正字(略字は中、日、韓の順)を使用
1984年5月 東京にて地域諮問会議(Regional Consultation Meeting on the Standardization of Acupuncture Nomenclature )が開催。
9ヶ国(日本・中国・韓国・香港・オーストラリア・フィリピン・ニュージランド・ベトナム)
・奇穴は1900年以前の文献に記載されたものとし、その中から使用頻度の高いものを選定
・新穴は1901年(20世紀)以降の文献に記載されたものとし、臨床上効果のたしかなものを選定
・基本線とその名称の承認
・経穴名の意味について
・14の頭鍼線の提示
1985年7月 香港にて第2回WHOワーキング会議(Second WHO Working Group on the Standardization of Acupuncture Nomenclature)、日本・中国・韓国・香港、オーストラリア、フィリピン・ニュージランド・シンガポール・ベトナム、
・奇穴・新穴については、
@広く一般に使用されていること
A必ず臨床的効果があること
B位置が明瞭であること
Cすでに標準化された鍼灸穴から半寸以上はなれていることなど
・奇経の英語名称の標準化
・経穴文字の意釈を英語で作成の提案、中国の提案として「十四経穴名簡釈」
・日本は経穴文字の解釈を公表している研究を参考にして、中国説と極度に解釈が異なる108穴について意釈を作成し、これを英訳してWHOに送付した。
これらの資料は各国で検討。最終的に40穴について日本と中国で再検討。
・基本線については、中国では受け入れられないという結論。
その理由として経絡は診断・治療の重要なシステムであり、それ以外に別の線をつくることに抵抗。
1986年6月 ソウルにて第3回ワーキンググループ会議(Third WHO Working Group on the Standardization of Acupuncture Nomenclature)、日本・中国・韓国・フィリピン・シンガポール・ベトナム。
・耳穴48穴合意。
・古典9鍼と現代鍼4鍼
・骨度篇の36の部位のうち6つの合意
・基本線については、議論延期。
・標準化された用語の普及活動
1989年10月 ジュネーヴにて鍼用語標準化国際会議(WHO Scientific Group of Standardization of Acupuncture Nomenclature)の開催。
・経穴部位について
@部位の記載が明らかな最も古い文献を採用
A部位の表現は現代の解剖学に基づいて表記する
B解剖学的な基準点を設けて、古典記載の分寸に従って分数で割り込むについて各国で検討する。
最終的にジュネーヴのWHOで会議を開くことを要請。
日本経穴委員会は『標準経穴学』医歯薬出版から発刊。
1989年 The Location of Acupuncture、State Standard of the People,s Republic China (Approved by the State Administration of Traditional Chinese Medicine) Foreign Languages Press Beijing
WHOで決定された三焦経 Triple of Energizer(TE) をSanjiaojing(SJ) と表記。
督脈をGovernor VesselをDU Vessel(DU)、
任脈をConception Vessel(CV)をRen Vessel(RV)とまず表記。
WHOの決定に事項に従っていない。
1990年 Location Points, The national Standard of the Peoples Republic of China,Issued by State Bureau of Technical Supervision of the Peoples Republic of China (中国政府の公定書「公標」(GudBing GB)に1989年の出版と同じものを収載と、国家標準としてしまった。)
2.参考文献
1)津谷喜一郎:WHOと伝統医学(V)世界共通の鍼用語をめざして(その1)―各国 での鍼用語標準化の動き―、現代東洋医学、12(4)、115-120、1991.
2)津谷喜一郎:WHOと伝統医学(VI)世界共通の鍼用語をめざして(その2)―世界的な鍼用語標準化へ―、現代東洋医学、13(1)、100-112、1992.
3)日本経穴委員会:鍼用語標準化に関する第2回WHO地域ワーキンググループ会議(I)、医道の日本、44(10)、67-76、1985
4)日本経穴委員会:鍼用語標準化に関する第2回WHO地域ワーキンググループ会議(II)、医道の日本、44(11)、87-98、1985
5)日本経穴委員会:鍼用語標準化に関する第3回WHO地域ワーキンググループ会議@、医道の日本、46(9)、99-106、1987
6)Standard Acupuncture Nomenclature Part1 Revised Edition、World Health Organization Regional Office for the Western Pacific Manila, Philippines.1991
7)Standard Acupuncture Nomenclature Part2 Revised Edition、World Health Organization Regional Office for the Western Pacific Manila, Philippines.1991
8)A Proposed standard International acupuncture nomenclature, , Report of A WHO scinetific Grou , 1991.
9)Standard Acupuncture Nomenclature Second Edition、World Health Organization Regional Office for the Western Pacific Manila, Philippines.1993